はじめに
近年は電子工作ホビィストが使用できる基板はブレッドボードやユニバーサル基板あるいは自作エッチング基板に留まらず、手軽に多層プリント基板をメーカーに発注して手にすることができるようになった事で、個人でも見栄えよく、製品に近いプロトタイプを作成する事ができる便利な世の中になったと感じています。
これの背景としては、試作基板の製作に当たって、配線設計は、基板CADがフリーソフトとして提供されるようになったことで導入の敷居が無くなり手軽に行うことができるようになったことが一つの要因と考えています。そして基板製造については、メーカーへの発注は必要とする仕様を選択肢から選ぶ簡易な操作をWEB上で行うことで完了するようになっています。この基板WEB注文は、通常の物品オンラインショッピングと同様に手軽で迅速に、それでいて安価に試作基板が手元に届くBtoCの一つの成功例だと考えています。
このような試作基板を製造している業者は日本国内外に複数ありますが、今回、中国企業の基板製造サービス業者のPCBwayさんから試作サンプルを提供して頂けるとのことでお願いしてみましたので紹介します。
WEBサイトでの基板発注手順
基板仕様入力から概算見積まで
WEBでの注文作業に入る前にKiCADなどの基板設計CADにて基板の配線設計を完了し、ガーバーデータを出力してZIP形式などの圧縮ファイルを準備しておきます。あとはPCBWayのWEBサイトから簡単に注文できます。
サイトの標準は英語表記になっていますが日本語サイトも選択できるようになっています。日本からの利用者も案外多いということでしょうか。サイトのデザインも基板製造に必要な入力項目が分かり易くまとまっています。基板の概算見積りまではユーザー登録の必要もなく無料で実施できますので色々仕様を変更して試してみると良いです。
今回準備した基板の仕様は次の通りです。
配線ルールについてはそれほど微細な仕様となっていない基板を3種×2個の配列にしたパネル(シート)にしてガーバー出力をしました。
〇単品仕様:
・両面基板(3種類、サイズ:50 mm x 50 mm x 1.6 mm)
・半田レベラー
・最小ビア径0.3㎜
・最小線幅線間(L/S=0.25/0.2 mm)
〇パネル仕様:下図の通り。
・3種類×2枚の合計6枚を面付け(サイズ:150 mm× 100 mmx 1.6mm)
・Vカットあり。
この仕様をもとにWEBで入力していきます。
① 「PCBインスタント見積もり」をクリックします。
② 基板の種類を選択します。今回は一般的なガラエポ両面基板ですので「スタンダード基板」を選択します。
③ 「基板仕様選択」から基板のサイズ、試作枚数、材質、厚みなどを入力または選択していきます。入力すべき内容がよくわからない場合は、[?]マーク や ▶使い方(3ステップ) をクリックすれば、詳しい説明が表示されるようになっています。
なお、今回は電子部品を自分で手はんだ付けするため基板製造のみの発注とし、メタルマスクと部品実装サービスは使用しませんでした。今後、機会があれば試してみたいと思います。
④ 一通り入力が完了したら「計算する」をクリックすれば、入力した仕様に従った基板の概算見積もりが完成します。
最後に、製造時間を短縮したい場合は特急料金を支払う選択をして、配送先の国とDHLやFEDEX あるいはOCSなどの輸送業者を選択するとその料金を含めた概算見積もりが完了します。
以上で問題がなければ「Save to Cart(カートに追加)」をクリックすれば要求仕様の入力は完了となります。問題がある場合は該当個所を修正して再度「Save to Cart」をクリックすれば大丈夫です。
この様にPCBWayのサイトは、とても簡単な操作で仕様入力から概算見積もりまでを短時間で実施することができるので、使い勝手は良いように感じました。
なお、冒頭の通りここまでの作業はaccountの作成を必要としないので気兼ねせずに試すことができます。
ガーバーデータのアップロードから金額確定まで
「カートに追加」を選択すると(未ログインの場合)ログイン画面が表示されますので、ログインします。また、アカウント作成がまだの場合は、ここで作成します。
ログイン後すぐにガーバーファイルを添付する画面になりますので自身のPC上にあるガーバーデータをドラッグドロップで追加し「今すぐ注文する」をクリックします。
ガーバーデータのアップロード後はPCBWayさんにてデータに問題点がないか確認作業が開始されます。もしデータの不足があった場合にはメールやWeb上にて連絡が入りますので追加および修正したガーバーデータを再度アップロードします。
ひとまずデータに問題が無くなれば、最終仕様が確定されて正式見積金額が発行されます。この後、「支払い」処理が完了すれば実際の基板製造に関する一連の作業が開始される事になります。
ちなみに、今回はドリルデータのガーバーデータを送信することを忘れていたようでReview Failのメールが送られてきました。このメールに不具合内容は記載されていませんでしたが、WEB上のメッセージにドリルデータがないと記載がありましたので、ドリルデータを含めた全ガーバーデータを再アップロードしました。
また、3種類の異なるパターンを面付けしているのですが、「異なった面付けの種類」が「1」になっているところが少々気になったのでPCBwayさんの担当者に確認してみました。
送信したガーバーファイル上は3種類×2個の合計6個の面付けになっていることを認識しているようでしたので問題ない旨を連絡して「支払い」を完了して基板製造作業に進めました。
今回の最終製品詳細は下図のようになっています。
基板製造では進度確認ができる
基板の製造工程に入ると現在どの工程まで進捗しているかを逐一確認することができ、投入された現地時間が具体的に表示されているので安心できます。なお、各工程がどのような作業なのかもWEBサイトで説明を見ることができるので非常に参考になると思います。
おわりに
今回のサンプルは支払い完了後、下記の生産プロセス時間からわかる通り3日で製造が完了しました。こうみるとドリル、パターン、レジストの工程時間が長いですね。実際に加工時間が長いのでしょうか、それとも加工の順番待ちがあるのでしょうか。
今回の輸送業者はOCSを使用しましたが通関申告も速やかに完了して配送業者に引き渡されているようです。この調子であれば早ければ30日には手元に到着でしょう。その場合、試作基板はガーバーデータの送信から約6日間で手元に届くことになります。(実際に翌日の30日には着荷しました)
サンプル到着後には基板の出来映えをレビューしたいと思います。
PCBWayさんでの基板発注の一連の作業はとても簡単で分かり易く、説明も詳細に記載されており好感がもてました。皆さんもユニバーサル基板から一歩アップグレードして自分で設計したプリント基板を製造しプロトタイプ製作にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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