はじめに
KT0936はコントロール用のマイコン不要、かつ無線周波数における回路定数の検討不要で手軽にラジオが楽しめるため、電子工作の初級者には頼もしいDSPラジオICです。先日の記事では動作確認を行いましたが、今回は手軽にAM放送とFM放送を楽しめるような小型のモジュールを製作してみましたのでご紹介させて頂きます。
回路図
KT0936のデータシートに記載されている参考回路図を簡素化し部品点数を極力減らした上で、AMとFMを簡単に切り替えて受信できるような回路設計を行いモジュール化してみました。
また、今回はKT0936の特徴としては、ICの起動時に外付けEEPROMに記録されている設定データを読込むことができるので、この機能を試すことができるように外付けEEPROMを接続可能な周辺回路に仕上げてみました。
データシートについては、例えば、ICを販売している電子部品販売業者のウェブサイトをご参照お願いします。
秋月電子通商:https://akizukidenshi.com/catalog/default.aspx:販売コード:117874
aitendo:https://www.aitendo.com/product/19053
簡単に回路図の説明をしますと、オーディオ部分は、KT0936のオーディオ出力はモノラルですが、オーディオジャックはステレオ用を使用し、LとRの両端子にICの12番端子(AOUT)からの出力を接続しています。
音量調整は12番端子(AOUT)とオーディオジャクの間に直列接続した可変抵抗でオーディオ信号電圧を分圧させる事で行います。
AMとFMの受信切り替えは、10番端子(SPAN)に加わる電圧で切り替えることになり、上記回路図では抵抗分圧で電圧を作っています。10番端子と3.3Vに10kΩを接続した場合、10番端子とGNDに接続する抵抗値はデータシートによるとAMは1kΩ、FMは412Ωとなっています。抵抗値の切り替え選択は回路図の通りSPDTスイッチでの切り替えにする、あるいは、ピンヘッダとジャンパキャップを使用して切り替える方式が簡単で良いです。
FM信号はイヤホンのGNDラインを使用してICに入力しています。
基板上には0.1uHと24pFの並列接続で約100MHzの共振回路を形成する事で、極力、FM信号をGNDに流さずICに入力されるようにしています。
EEPROMとのデータ送受信は、I2C通信方式であり、KT0936の7番端子(RF_SW)をDATA信号線、11番端子(AM_FM)をCLOCK信号線として使用しEEPROMと接続することになります。
なお、この記事を作成時点ではEEPROMの動作確認はできていませんのでご了承ください・・・
基板図面
両面基板の表面側に回路構成に必要な全部品を搭載し、裏面側は全面GNDプレーンなるようなデザインとしました。IC単体ではGND端子としてデジタル用、アナログ用、RF用と3つに分離されてピンアサインされていますが、基板上ではGNDプレーンで共通GNDにしています。
また、今回の基板設計の特徴として、独自のオーディオ系回路に接続したり、好みの筐体デザインに組み込む場合には、モジュールとして最低限の回路が搭載された小型形状の方が取り扱いが良いため、基板をカットすることでICおよび水晶振動子などの周辺回路定数が実装されているメイン回路のラジオモジュールと、EEPROMおよびオーディオジャックを実装しているオプション回路の2つに分離できるようなデザインにしました。
なお、LEDインジケータを点灯させて受信状態を確認したい場合は、下図の赤線の箇所に抵抗R6と白色LED D1のアノード端子をリード線で半田付けして結線をお願いします。
ラジオモジュールの説明
外観
モジュール部分の実物は下の写真となり、回路図の青色2点鎖線で囲んだ回路部分となります。
メインのICであるKT0936M(B9)の周辺にFM信号反射用の共振回路、水晶振動子と負荷容量、電源ノイズ除去用パスコンの合計9つのSMD(表面実装部品)を実装しています。
最下部はピンヘッダなどのコネクタ接続用にスルーホール端子を配置しました。
端子配列
モジュール端子については、ほとんどの端子をICから直接取り出していて、配列は以下の通りです。
端子番号 | 端子名 | I/O | 機能 |
1 | AOUT | Analog Output | Audio output |
2 | SPAN | Analog Input | Band switching control |
3 | CH | Analog Input | Frequency control pin |
4 | AM_FM | Digital I/O | default 47Kohm Pull-up resistor. |
5 | RF_SW | Digital I/O | RF circuit switching control pin. |
6 | TUNING | Digital Output | Effective instructions |
7 | VDD | Power | Power Typ 3.3V(2.1V~3.6V) |
8 | GND | Ground | Ground |
9 | AMINP | Analog | MW with LW The positive electrode antenna input |
10 | AMINN | Analog | MW with LW Antenna negative input |
11 | RFINP | Rf in | RF input |
オプション回路部分の説明
今回設計した回路基板では下の写真のような部品組み立てとなりますので参照してください。
電源入力用端子(J6)はターミナルブロックまたはピンヘッダ(ピンソケット)を使用すれば良いですし、AM/FM切替スイッチ(SW2)はSPDTスイッチまたはピンヘッダでも十分です。
また、AM用アンテナ(L2)はバーアンテナでは無く470μHのインダクタを使用しても放送波を受信することを確認しました。
実際に動かしているところ
アンテナやスピーカーが少々チープですが、音質や実際の受信状況を動画でご覧いただければと思います。
おわりに
KT0936は電子工作初心者向けのラジオICとして、プログラミングや難しい受信調整の必要も無く扱い易いので、基板設計の練習も兼ねてオリジナルラジオの製作にちょうど良いICだと思います。また、上記の記事を読んでいただいて興味を持っていただき、とりあえず電源ONで動かしてAMラジオを聞いてみたいと思われた方や、このモジュールを使って読者オリジナルの筐体に組み込んでAM/FMラジオの製作に挑戦してみたい方に向けてBOOTHにて頒布させて頂きますのでご参照下さい。
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