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デジタルアラーム時計IC”LM8560″を商用交流電源を使用せずに動かす回路設計例

電子工作

はじめに

共立エレショップさんで特価販売されているデジタルアラーム時計IC”LM8560″を2時分割ダイナミック駆動の4桁7セグLED”CSK-355″と組み合わせて動かしてみました。LM8560は時計としての基本機能である7セグLED駆動機能に加えて、アラーム機能、スヌーズ機能およびスリープタイマー機能を備えたデジタル時計専用のICです。また、時刻表示については12時間と24時間の表示切替も可能となっています。

デジタルアラーム時計IC “LM8560” の特徴

LM8560を利用してデジタル時計の回路設計をするに当たっては、二つの特徴を理解する必要がありますので、今回の記事としてご紹介させて頂きます。

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●二つの特徴
・基準周波数として50Hzまたは60HzをICに入力する
・2時分割ダイナミック駆動仕様の7セグLEDを使用する

次に、それぞれの特徴について回路設計を行う上で考慮すべき点を見ていきます。

回路設計のポイント その1

LM8560用基準周波数の生成方法

LM8560を使用するにあたり、データシートに記載されている動作説明や参考回路例を読み解くと、50Hzや60Hzといった基準周波数を商用交流電源から取り出して使用することが前提となっていることがわかります。当記事での電子工作では、安全面から不慣れな商用電源を取り扱うことは避けて、電池やACアダプターのようなDC電源で駆動できるような回路設計ができないかを検討しました。そのため商用交流周波数の代わりとなる50Hzもしくは60Hzといった基準信号をオシレーター回路で生成する手段として、60Hz発振専用IC”MM5369AA“を使用する方法と、回路定数次第で発振周波数を可変できるタイマーIC”NE555“を使用する方法を試しました。

MM5369AAで60Hzを発振させる

“MM5369A”は60Hz信号を発振させることができる専用ICです。このICは図1のように、周辺部品としては水晶振動子、負荷容量、バイアス抵抗といった数点の部のみで簡単に60Hzを発振させることができ、周波数の微調整は負荷容量の一方にトリマコンデンサを使うことで可能となります。

図1. MM8569AAを用いた発振回路


“MM5369AA”はあまり一般的に使用されていない部品なのか、日本の電子部品ショップで取り扱っているところが見つからなかったため、海外通販のアリエクスプレスから購入してみました。
また、水晶振動子については、私には馴染みのない3,579,545Hzという周波数が必要であったので調べてみると、こちらは普通に秋月電子通商で販売 (販売コード 108664) されていました。ちなみに、この周波数はかなり一般的な様で、NTSCのカラーサブキャリア周波数であったり、MSXパソコンのクロック周波数で使用されていたようです。

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なお、アリエクスプレスから10個入りを購入したのですが、同一の回路定数で60Hzの発振を確認できた個体は4つでした。残りの6つは回路定数を振って動作点の検討ができていませんが、全く発振しない不良品が混入している可能性も否定できません。悪く言うつもりはありませんが、アリエクスプレスから購入する場合は、部品の到着後は直ぐに動作確認をした方がよさそうですね。アリエクスプレスでの購入に抵抗がある場合はAmazonでも取り扱っている業者が少しはあるようなので、こちらでの購入のほうが多少は安心なのかもしれません。

NE555で60H/50Hzを発振させる

NE555はタイマーICとして一般的に広く利用されているICで、発振器、パルス発生器、タイマー回路として利用することができます。

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NE555については、インターネット上にはすでに多くの記事が掲載されていますので使用方法などは省略しますが、図2ようなコンデンサと抵抗で構成される回路で60Hzの発振回路(無安定マルチバイブレータ)として使用することができます。ただし、周波数精度は水晶振動子を使用するMM5369より、かなり劣りますので時計用のクロックとして使用するには力不足とも言えます。

NE555での発振周波数(Hz)は、f=1.44/{(R1+2×R2)×C1} より求められますので、60Hzで発振させる場合、R1=1kΩ、R2=11.5kΩ=10kΩ + 2kΩ~5kΩ(半固定抵抗)、C1=1uF と計算できます。

図2. NE555を用いた発振回路

回路設計のポイント その2

2時分割対応のダイナミック駆動7セグLEDについて

LM8560のLEDコントロール用に準備されている端子は、1つの端子を2つ(以上)のLEDのアノードに接続する仕様となっていますので、接続するそれぞれのLEDのカソード端子電圧を時分割でコントロールし点灯させるLEDを決定する必要があり、2時分割に対応した7セグLEDの使用が適切です。

図3.2時分割動作のイメージ

2時分割の7セグLEDとしては、LM8560と同じく共立エレショップさんで特価発売されている「時計表示用 2時分割 ダイナミック駆動 7セグLED カソードコモン 赤」”CSK-355“を使用しました。

販売ページには「デジタル時計用IC『LM8560』の表示用に適しています」との記載がありますので、共立エレショップさんが動作保証をしている訳ではありませんが、基本的には問題無く使用できると思われる部品です。

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“CSK-355″は、カソードコモン仕様の4桁7セグLEDモジュール(以下、LEDモジュール)となっており複数個のLEDが2つのカソードに集約されています。2つのカソードを2時分割でコントロールして点灯させるLEDを選択することになります。詳しい仕様は不明なのですが、共立エレショップさんの販売ページに記載されている情報からは次の通りです。

  • 許容損失:400mW/桁
  • 最大順電流:20mA(平均)、150mA(ピーク) ※セグメントあたり
  • 逆耐圧(VR):5V
  • 順電圧:2.0V(Typ) ※If=20mA
  • ピーク波長:697nm(半値幅90nm)
  • 外形寸法(実測値):約41×18.5mm

LM8560を正電源で動作させる場合の動作電圧仕様が+7.5V~+14Vであることから、LEDモジュールのカソード側の電圧は+5.5V~+12V程度となっていると考えられます。また、一つのカソードに接続されるセグメント数は14個または15個ですので、共通カソード側に流れる最大の順電流は20mA×15個=300mA程度と計算されます。このことから電流制限抵抗は、

R = +5.5V/0.3A ≒ 20Ω (5W品) ~ +12V/0.3A ≒ 40Ω (4W品) を使用すればよさそうです。

LEDの電流制限用の抵抗器は、20Ω~40Ω程度の低抵抗値であっても定格電力(W)の大きいセメント抵抗を使用しました。

2時分割制御用にトランジスタでスイッチ回路を構成する

LM8560のデータシートに記載されている参考回路図によると、LEDモジュールの2つのカソード電圧が排他的にハイレベル、ローレベルを繰り返すような2時分割動作に商用交流の周波数を利用しています。今回の電子工作では商用交流電源の代わりに、上記「回路設計のポイント1」で生成した60Hzの周期の信号を利用し、トランジスを用いたスイッチング回路のベース電圧を変化させることで、トランジスタのコレクターに接続したLEDモジュールのカソード電圧を制御し、商用交流と同様な機能を実現しました。ここでのトランジスタはコレクター電流が大電流でも十分な余裕をもって使用できるようにコレクタ電流(Ic) Max 2A品の”2SC2655“を選定しました。

図4. カソード端子を2時分割で制御する回路例

R28とR29に加わる電圧の実測値

実際の動作状態で抵抗器に流れる電流値が気になったので、抵抗値とLM8560に加える電源電圧をパラメータにして、抵抗器に加わる電圧をオシロスコープで実測し、電流と電力を計算してみました。

R28の抵抗値
(Ω)
電源電圧
(V)
R28両端の電圧
(V)
電流
(mA)
電力
(W)
307.54.11370.56
30127.22401.73
30149.03002.70
107.51.61600.26
10123.23201.02
10144.14101.68
表1. 抵抗R28の消費電流と電力

もう一方のカソードに接続される抵抗器R29についても測定しました。ほぼ、R28と同じ傾向がみられました。

R29の抵抗値
(Ω)
電源電圧
(V)
R29両端の電圧
(V)
電流
(mA)
電力
(W)
307.53.81280.48
30126.92291.59
30148.52832.41
107.51.61600.26
10123.23201.02
10144.24201.76
表2. 抵抗R28の消費電流と電力

上表から抵抗器の定格電力は、電源電圧7.5V時で5W品を使用していてもほんのりと温かくなりますが、実測データの一例から計算すると14V動作においても3W品が使えそうです。ただし、抵抗器もトランジスターも触れないぐらい発熱していますよ!

参考までに、オシロでの実測波形の一例を添付します。上段がR28の両端の電圧波形、下段がR29の両端の電圧波形です。MM5369はDUTY比50%の波形を出力しないことを念頭にこの波形を確認すると、CSK-355の23番端子と24番端子が交互にオンオフしていることがよくわかります。

図5. オシロスコープで電流制限抵抗器の両端電圧を実測した波形

波形取得にはOWONのハンディタイプのオシロスコープを使用しています。据え置き型はディスプレイサイズも大きくて機能、操作性が優れていてすばらしいですが、ハンディタイプは小型で設置場所を選ばず、バッテリー駆動が可能で、どこにでも手軽に持ち運び計測ができて便利ですよ。

ここにきて落とし穴が・・・?

あとは、LM8560の時計としての機能を活用するために、時刻設定用のプッシュスイッチや、アラームを鳴らすためのブザーなどを接続すれば基本的な回路は完成となるのですが、アラームを鳴らすにあたり一つ悩まされたポイントがあります。

アラーム音発声用に圧電パッシブブザーを使用して回路を設計したのですが、なぜか設定した時刻になっても音がなりませんでした。パッシブブザーの使い方は難しいものではなく「おかしいなあ?」と思いながら、オシロでLM8560のALARM OUT端子を観測すると、アラームオン時には本来、900Hzの振動波形が2Hz間隔で出力されるべきところが、ハイレベルに貼り付いており圧電ブザーに正常な振動が伝わっていませんでした。

ALARM OUT端子からの出力が振動波形にならない原因が全く分からなかったのですが、データシート上にはアラームとの関係が記載されておらず、AC電源が遮断された際のバックアップ用発振器(CR発振器)を動作させるために使用するものと記載されている“CR INPUT”端子のCR回路定数を実装することで正常に振動が確認できました。商用交流を使用していないことが原因であるのか確証がありませんが改善した為、(あくまで個人の電子工作なので)”ヨシ!“としました。

図6. 27番端子に接続するCR回路は省略することはできません

今回のように商用交流を使用せずに動作させる方式は、データシートに使用方法については記載が無く動作保証がされていない例外的な使い方と考えられますが、データシートに記載されている参考回路図にはCR回路が記載されているので、ありきたりですが、不明点については勝手な解釈をせずに、まずはデータシートに素直に従った回路で構成することが完成の王道と言えるかもしれません。

全体回路図

CSK-355には時刻表示用の7セグメントおよびコロン以外にドットが3つ実装されているのですが、ALARMのオンオフ設定状態のインジケートに加えて、SLEEPタイマーのオンオフ設定状態もインジケートされているほうが便利と思い、各ドットが意味する状態表示を購入した際に添付されている共立エレショップさんの簡易説明書とは異なる割り当てを行い設計しました。

左上左下右下
簡易説明書AMPMALARM
オリジナルPMSLEEPALARM
表3. 各ドットのインジケータ表示割り当て
図7. CSK355の端子とセグメントの接続仕様

PM時に点灯、SLEEP動作時に点灯するように変更し、ALARM用は変更せずで、アラーム音を鳴らす設定しているときに点灯となります。

これまで主要な回路ブロックを説明してきましたが、全体をまとめた回路図は以下の通りです。

図8. LM8560とCSK-355で構成されるデジタルアラーム時計の回路図案

ブレッドボード上に配線して回路動作の確認をする

ブレッドボード上に実際に部品を配置/配線しての動作確認を行ってみました。LM8560はピンピッチが1.78㎜なのでブレッドボードに直接差し込むことができなく、ブレッドボードの2.54mmピッチに変換するピッチ変換基板も持っていなかったので、ICの端子にワイヤーを直付けして配線しているため、ジャンパワイヤの本数が多くなるためどうしても見た目はごちゃごちゃっとしていますがご容赦ください。

図9. ブレッドボードで動作確認

このようにブレッドボード上に試行錯誤で部品を配置し動作検証した後にプリント基板の設計・製造に取り掛かることは賛否両論あるかと思いますが、プリント基板を作成するとしてもそれなりな金額で費用がかかることですので、基板試作の前に回路のミスを発見することができれば試作回数を減らせる可能性もありますので個人の趣味レベルでは必要なステップなのかなと思います。

プリント基板での試作

本記事作成時点(2026.10.13)では基板設計をする時間的な余裕がなかったので、残念ながら基板作成まではできていません。当記事に興味を持たれた方がいらっしゃれば、上記の回路図と実態配線写真を参考に基板設計に挑戦してみて頂けませんか?回路の動作保証はできませんが(笑?)
後日、基板設計と試作を行うことができたなら、このセクションに追記していきたいと思っています。

おわりに

今回LM8560を動かすにあたり、50Hzや60Hzのようなよく耳にする周波数を精度よく発振するICがほとんど存在しないことに驚かされ、2時分割で多桁のLEDモジュールが存在することも初めて知りました。私にとっては、2つのメイン部品はなかなか味のある部品でした。


LM8560本来(?)の設計基準であるトランスを利用して商用交流100Vを交流12Vのような低電圧に変換したのちに商用周波数と直流電圧を取り出すような回路設計もアナログ的で楽しそうでまた試してみたいと思います。ただ、昨今トランスも結構なお値段をしている部品ですので、デジタル時計の製作のためだけに使用するのはちょっとナンセンスかなあとも思ったりして。いえいえ、電子工作ホビィストは、色々なことに手を出して挑戦する必要ありですね。

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