単3電池で動くWiFi温湿度計の製作例

電子工作

はじめに

当ブログでの電子工作では温湿度計がしばしば登場しますが、決して温度計マニアではありません。
各電子部品メーカから多種多様なセンサーが発売させており、特に温湿度計は数多くの種類がありとても興味深く、つい動かしてみたくなります。ん?もしかしてそれを世間ではマニアって言うのですか?
さて今回は、ESP32-WROOM-32を使用することで測定値をクラウドに保存も可能な単3電池3本で動作するWFi温湿度計の製作例についてご紹介します。

システム構成について

通信モジュール

ESP32-WROOM-32(以下ESP32に略)は2.4Ghz帯WiFi&Bluetoothモジュールです。詳しくはデータシートをご確認いただくこととして、電池駆動させるための重要ポイントである電源系の仕様を確認すると、供給電圧はmin 3.0V, max 3.6Vであり、供給電流はmin 500mAとなっています。

Symbol ParameterMinTypMaxUnit
VDD33Power supply voltage3.03.33.6V
IVDDCurrent delivered by external power supply0.5A
TOperating ambient temperature (85℃ version)-4085
Table 1. Recommended Operating Conditions

単3または単4アルカリ乾電池を使用する場合、直列接続2本では3V出力となり下限電圧で使えるかどうかのギリギリのラインとなります。
直列3本では4.5Ⅴとなり上限電圧のスペックを逸脱してしまうため使用することができません。つまり、2本の場合は電圧を上げる機能を有する昇圧コンバータ回路が必要となり、3本の場合は、電圧を下げる機能を有する降圧コンバータ回路が必要となります。
これらの回路をIC単体に周辺回路定数を設計するのは電子工作としては難易度がありますので、電源ICと周辺回路を一つの機能デバイスとして出来上がっているモジュールを使用するほうが簡単です。

電圧コンバータ回路

DCDCコンバーター回路の設計は、インダクタンスやキャパシタの定数選定や回路配線の引き回しが適切になっていないと異常発振などの動作不具合や電力変換効率の劣化を起こしてしまいます。それゆえに一般の電子工作ではあらかじめ性能保証されたモジュールを購入することがベターと思います。
比較的入手性の良い電源モジュールとしてはストロベリー・リナックスという電子部品販売業者に次のようなものがあります。
TI社製TPS61291を実装した昇圧コンバータモジュール
このモジュールの性能は入力電圧範囲はDC0.9V~(出力電圧)、出力電圧は2.5V, 3.0V, 3.3Vのどれかを選択設定することができます。このモジュールを使用してEPS32を動作させるためには、電池1本あるいは2本を使用して3.0Vまたは3.3Vの出力設定をすることになります。
私が使用した際には単3アルカリ乾電池を2本使用、1分間隔で測定し10分毎にサーバーへ測定値を送信するシーケンスで2か月弱の間稼働していました。
この時の回路動作条件は、温湿度センサーはSHT31を使用、ESP32はDEEP SLEEPモードで動作させています。
最終的にESP32の動作が停止した電池2本の電圧値は約2.2Vでした。乾電池の終止電圧0.9V~1.0Vですので、2本分の2.0Vまで動作したということは、ほぼ電池の容量を使い切ったようです。

TI社製TPS63020を実装した昇降圧コンバータモジュール
このモジュールの性能は入力電圧範囲はDC1.8V~5.5V、出力電圧はDC5.0Vまたは3.3Vのいずれかを選択設定となっています。昇降圧タイプですので、電池2本あるいは3本で出力3.3Vを得ることができます。
現在このモジュールを使用して、電池3本での動作期間を実機で確認中ですが、4ヶ月経過後で電池3本の電圧は約3.9Vとなっています。先ほどと同じ回路動作条件であれば1年程度の間は動作させることができるのではないでしょうか。

なお、両タイプのDCDCコンバータモジュールで過去に同じような温度計を製作したことがありますが、その時も5年間ほど特に故障することもなく動作していますので、手軽で使いやすいDCDCコンバータモジュールとして優秀なものだと思います。

回路接続ブロック図

上記の2種類の様な電源モジュールを揃えることができれば、基本的にはESP32モジュールと結線するだけですのでそれほど難しいところはありませんが、ESP32モジュールを取り扱い易くするための実装基板を参考に紹介しておきます。
こちらの基板にはespressif社公式のDEVKITに搭載されているDCDCレギュレータICやUSBシリアル変換IC、インジケータ用LEDは実装されていませんので動作上必要の無い余分な電流消費を抑えることができます。
ただし、プログラムの書き込みはシリアル(UART)端子からとなりますので別途、USBシリアル変換器が必要になるなどファームウェア書き込みに少し準備が必要です
変換基板with部品 [P-ESP32E]
変換基板with部品 [P-ESP32D]

基本的にはESP32モジュールの各端子からの信号線引き出しとパスコン、プルアップ抵抗、リセットボタン、BOOTボタンが実装されているのみですので、CADを扱える場合は電源モジュールも実装できる様なプリント基板を自作しても良いかもしれません。

おわりに

設計が難しい回路であってもモジュール化された部品が市販されていると、色々な回路を駆使した電子工作がお手軽になりますね。防水ケースに内蔵すれば屋外でも使用可能なWifi温湿度計が簡単に出来上がります。

補足

連続稼働日数の結果 (2023/11/5)

TI社製TPS63020を使用した温湿度計の長期稼働結果をご紹介します。
なお、電池は単3電池を3本、温湿度センサーはSHT85を使用た場合となります。

10月末ごろからデータの送信が途切れだしました。送信が成功した際には、送信が失敗していた間の温湿度の計測値も送信されてきているため、ESP32とセンサー自体は動作しており温湿度の計測はされているようです。

結果は、上記グラフの通り、252日間連続稼働していました。単3電2本駆動での稼働期間が2か月程度ですので、電池1.5倍で4倍の稼働日数になることがわかります。停止時の電池電圧は3本とも約1Vになっていました。
3.0V以下でも昇圧されて2.2Vぐらいまでは動作するのかな?と思っていたのですが、WiFi通信まで行えるほどの十分な電力までは電池に残っていないということでしょうか、意外と低電圧では動作しないことが認識できました。

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