Sensirion SHT85で屋外温湿度計の精度改善を行う

電子工作

はじめに

屋外の温湿度計測用として防水ケースで作成した筐体に高精度と言われるSHT31を内蔵して温湿度を測定していましたが、屋外での使用開始後、数か月から半年程度で湿度の計測値が正常値より常に20%程度上昇してしまい、精度の良い測定ができなくなる症状が発生していました。

確か季節的には梅雨あたりから異常値になったと記憶しています。
その為、新品のSHT31に交換してみましたが、同様に数か月で異常値となり湿度の計測は半ばあきらめていました(但し、温度は正しく計測できているようです)。防水ケース内とはいえど多雨によるものなのか長時間高湿度に曝されると、このセンサーは故障するものかもしれません。
この度、どうしても屋外湿度を正しく計測することが諦めきれず、値は張りますが思い切ってフィルターメンブレン付きのSHT85温湿度センサーを購入し、フィルターメンブレンが屋外環境における長期間使用に効果的かどうか検証することにしました。

価格と特徴

SHT85の価格は電子部品代理店(通販)で4,000円~6,000円であり、一般的に市販されているSHT31(秋月電子通商:通販コード K-12125)の1,000円程度と比べるとかなり高額です。ちなみに私の購入時のSHT85の価格はchip1stopが最安値の3,650円(税抜)でした。

SHT85の特徴はIP67に準拠してセンサの開口部を液体や埃から保護するPTFEメンブレンを備えている事と、故障時の交換の利便性を考慮したピンヘッダ付きの基板実装品となっている事です。
但し、ピンピッチは電子工作で一般的な2.54mmピッチでは無く1.27mmのハーフピッチである点と基板上にはI2C信号ラインにプルアップ抵抗が実装されていない点に注意が必要です。
私は1.27mmピッチのソケットが手持ちになかったので写真のようにセンサーのピンヘッダにリード線をはんだ付けし熱収縮チューブで半田付け部分の絶縁と保護を行いました。また、リード線のもう一端には2.54㎜ピッチコネクタ(QIコネクタ)を接続しブレッドボードなどで手軽に使えるようにしています。
なお、このSHT85のSCL、SDAラインにはプルアップ抵抗が実装されていませんので必要に応じて10kΩ程度の抵抗を実装する必要があります。

特性

SHT85の特性をデータシートで確認すると、SHT35が湿度に関しては同等性能で、温度に関しては0℃以下および50℃以上でほぼ同精度となっていますので、SHT85に使用されているセンシングデバイスはSHT35を基板に実装したものだと推測します。

詳しく知りたい場合はそれぞれのデバイスのデータシートをお読みください。

実測結果

SHT31をSHT85に交換する前後における時間軸での温湿度測定グラフは下図の通りです。黄色線で示されるものが今回交換したセンサーの湿度測定値です。
交換前の10時頃の測定値は+70%程度で推移していますが交換後の12時頃の値は50%程度になっています。

センサー交換作業は室内で行いましたが、交換後は室内に設置している別の温湿度計による湿度測定値(水色線)とほぼ同等な数値を示しているため正常動作に戻っていると言えます。
一方、温度の計測値は今回デバイスを変更した温湿度計の測定値は緑色線で別の温湿度計の温度はオレンジ色線でセンサー交換前後でほぼ同じように値を示しています。
つまり、交換前は湿度に関しては異常であっても温度に関しては正しく測定できていたと言えます。

おわりに

過去、二度もSHT31センサーが梅雨時に故障した経験からするとフィルターメンブレン無しタイプのデバイスは、屋外環境における場合でも温度の計測値は信頼性が高いですが、湿度に対しては長時間高湿度下に曝されることでセンサーの劣化が急激に進むことが推測され、屋外での長期使用には適しておらず、屋内で使用する設計となっているものと考えます。

屋外の使用は防湿効果のあるフィルター付きのセンサーを選択してください。

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